1968年、「パリ五月革命」の五月です。
風薫る五月。光あふれる南仏の田舎が舞台。古いお屋敷に住む、とある裕福な一家の初老の男が、主人公のミル(ミッシェル・ピコリ)。
年老いた母親(ポーレット・デュボスト)が急死。折悪しく、フランス全土を巻き込む「ゼネラルストライキ」の真っただ中で葬儀屋さんもお休み。母親の葬儀もままなりません。棺も調達できず、急を聞いてかけつけた親戚一同の集まる中、遺体は居間のベッドに寝かせたまま!
遺体を尻目に、ピアノ演奏する人や、それに合わせてバレエのステップを踏む人。親戚一同なぜか踊り出したり・・・。もう、たいへん(笑)!
親戚の女の子(ジャンヌ・エリー=ルクレルク)は、亡くなったおばあちゃんにキスしたり、死後硬直で開いたまま固まった口をムリに閉じようとしたり・・・。はたまた大人たちの会話を聞きかじって「ピルってなに?」「ゲイってなんなの?」などなど、返事に困る質問をしますが、ミルおじさんは、少女のスカートから伸びる脚にチラッと目をやりながら(笑)、ウィットに富んだ答えを返します。
五月革命の波の中、「急激な価値観の変化」への人々のとまどいや、長老の死による一家の財産分けのゴタゴタを、コミカルなタッチで描いています。次々と噴き出す『人の本音』に、ある時はシニカルな視線をなげかけ、またある時は「そういうものだよね」と、エールを送っている感じです。
光にとけ込み、風とたわむれるミッシェル・ピコリの、肩肘はらない演技がすばらしい。「遺体」を演じきる(笑)、往年の名脇役ポーレット・デュボストにミウ=ミウ。そして10才のジャンヌ=エリーちゃん。みんなとても楽しそうでした!
♪♪♪ 「ステファン・グラッペリ」(ジャズヴァイオリン)の、エレガントで軽やかな演奏にのって始まる美しいこの映画、撮影は「レナート・ベルタ」です。まばゆいばかりの南仏の風景や、「ジャン・ルノワール」の映画をほうふつとさせるピクニックの様子など、たいへん美しい映像が音楽とともに印象的でした。
『死刑台のエレベーター』『地下鉄のザジ』などのルイ・マル、1989年の作品。脚本は、ルイ・マル&ジャン・クロード=カリエール。(※オンエアされたもののレビューなので、DVDの画質、特典などはわかりません。)