大きな出産だったようなコンサート。それをやり切れた面々。もう心配要らないな、そんな感慨をステージに立つ彼女たちに公演最後に感じました。卒業する稲場愛香さんには元々心配要らない。昨年の七夕に加入した3名には、この1年で抜けて行く偉大な先輩たちを感じて震える緊張もあったろうと思う。特にこの新メンバーの有澤さん、入江さん、江端さんが使命感を発揮し続けていました。後で聞いた話では最年少の江端さんは前夜一睡も出来なかったとか。しかしお母さんの良い言葉を貰って、本番では自身の可能性以上の力を見せて、揺るがない足腰でステージに立つ姿は強く綺麗でもありました。3人はここで大きな橋を渡ったなと。そんな感激が強く残りました。
Juice=Juiceのアイデンティティが変わったかも知れない。5人時代のオリジナル期は決め打ち型の安定性で魅了しまくって。今は「この人が歌えばどうなるだろう」という日進月歩の変化に富む意外性が面白くなって来て。しかし同じアイデンティティは「歌で魅せる力」というのが不思議に系譜の様にある事。特にアッパーな曲での迫真の歌声はゾクゾクします。フェスにもし出れば、歌で沸かす事が出来る稀有なアイドルにカテゴライズされそうです。
井上さんの歌声が轟きます。まずここが凄い。何人分かの威力。そして「仏像彫って魂入れず」の言葉がありますが、このグループにあってその魂を入れる大役に段原さんがいて、見事に炎の如く点火させます。5人時代は「この人が歌えば」という人がぞろぞろいました。今はどうでしょう。この井上さん、段原さんだけで既に戦慄する歌声になる。高らかに歌える2人。それを一番側で聞くメンバー達にもきっと大きく伝播して行くでしょう。
そしてステージ上で最高の可愛いと美の化身になるリーダーの植村さんがいる。1度目にすれば目が離せなくなる人。動く宝石みたいです。でも身近な感じ。メンバーから愛されているだろうな。今は植村さん一家のJuice=Juice。母子像みたいな優しさの植村母の感じがまたいいグループを感じます。秀逸なアルバム「terzo」の披露もこんなメンバーで歌われるなら、これもオリジナルです。好循環(笑)。Juice=Juiceに歌あればこそを、この映像から誰もが感じそうに思います。
稲場愛香さんに寄せて
「ダンスの神様」の呼び名に安住せず、歌を伸ばした努力家。この人の背中を近くで見れたメンバーは幸せでしょう。チーム戦術の高い理解力から、何が足りないかを分かる分析能力に長けた人。自分に伸ばせる余地は歌だと必死にオリメンに食らいついて行く姿が格好良かった。そして一番彼女の言葉で記憶に残るのはある公演のラストに言った「皆さん、楽しかった、じゃなくて、面白かったですか?!」と客席に問うた事です。楽しかったの種類の中の、面白かったかどうか。安定の良さを越えて、何かしら新しいお土産があったかどうか。彼女の問いに彼女の生命があったなと。ひたすらやって来た人はこんな言葉を吐く。心配要らない人です。
ダンスと可愛いと歌、という三本柱を手に入れたまなかん。ダンスは元々世界クラス、可愛いは天から貰った小柄故に為せる、歌は努力の賜物。見ていて最もワクワクする人でした。彼女のJuice=Juiceの後半はそんなゴールデンモーメントの連続で。中心選手から体の都合で一端アウトサイダーになり(確か小児喘息だったと記憶する。全ての喘息持ちの人への大きな希望と見本になりうると思う)、そして再びスターになる。こんな人のいたチームは今後も強くあり続けるでしょう。
プライドと情熱、家族愛と猫愛の人、稲場愛香さん。これで彼女の同期の歴史が終わるのが寂しくため息が漏れます。でも今も段原さんと一緒に出掛けたりするみたいなので、彼女の旅にもエールを送りたいです。エンディングも稲場さんらしく、発つ鳥あとに和む雰囲気を残して去りました。まなかんにあったスタイルはまなかんのもの。それをステージと客席で共有出来た時間が幸せでした。またどこかで見たい人です。有難う。気絶するほど…これからも愛されて行くでしょうね。
2022年5月30日 日本武道館公演