またしても、精神分析医が登場してペロペロともっともらしいことを宣う。ジャッロ映画とは元来フロイトなしには成立しないジャンルなのかもしれないが、彼は患者に対して常に有利な―というよりも、支配するような立場でふるまっているようにしか見えない。しかし、ジュリア殺しの現場をLSDでトリップしながら目撃したヒッピー青年の「とかげの皮膚のきれいな女を見たよ」というセリフから取られた原題も、「幻想殺人」という邦題も、すべてムード作りをしか指していなかったような結末を迎えてしまう。コーヴィン警部にスタンリー・ベイカーが扮していることからも知れるように、ミステリであり、エンディングで事件は解決をみるのであるが、それはしかし単なる体裁でしかない。この映画の眼目は、高名な弁護士の令嬢であるキャロルに扮したフロリンダ・ボルカンと共に体験する恐怖にこそある。
開巻すぐの列車内通路でさっそくヒロインは訳の分からない混乱に巻き込まれる。乗客のなかに全裸がまぎれこんでいるとわかった時はもう遅い。すでにオージー(orgy)は始まっているのだ。そこから闇の中を下降し、彼女はいつしか奇抜な部屋の紅いベッドの上でジュリアとからみ合っている。ジュリアは隣人の変人で恋人でもあった。これらの淫夢を精神分析医はキャロルのジュリアに対する侮蔑と憧憬のアンビヴァレンツが生んだものだと告げる。彼のミスリードは物語を複雑にすることにしか貢献しない。ヒロインと共にわれわれは、さらなる迷宮へと追いつめられてゆく。キャロルには父の助手である夫も義娘もいるが、彼らは彼女に寄り添ってはくれない。父は常に味方だが、キャロルのよき理解者でもないのだ。友人のなかには裏切り者さえいる。こうした状況のなか、彼女は単独行動をくりかえし、幾度も危機に瀕する。その危機のバックグラウンドにサイケデリアが禍々しく囲繞しているのが本作の特異なところだ。キャロル―や一般の人びとにとって、ドラッグやヒッピーやロックは理解を絶した彼岸の風俗でしかなかったのであろう。そのことがうまく物語に取り入れられていると感じた。サイケデリアが指向した“自由”は、彼らにとって“無秩序”のことでしかなかった。まさに、異郷(異星)からやって来た異文化だったのだ。だから、当然のように“犯罪”に結びつけられてしまう。
こうした背景に、ヒッチコックやポランスキーから借りた恐怖演出をうまく挟み込みながら、ロンドン(だけではないのかも知れないがロイヤル・アルバート・ホールなども見える)での圧倒的なロケーションと効果的なカメラ・アングル、そしてエンリオ・モリコーネのモダン―を通り越したもはやアヴァンギャルドな音楽が一体となってわれわれを迷宮の闇へと追いたてるプロセスには舌を巻くしかない。やや過剰な残酷描写やエロティック・シーンも、ここでは有機的に機能しており、コケ脅しのレベルにとどまっていないと思わせる。
異貌のスタンリー・ベイカーもいいが、セリフのないジュリア役のアニタ・ストリンドバーグの人形的な美貌はきわだっていた。そして、フロリンダ・ボルカン!まるで、本編全体が彼女のPVでもあるかのように次々と衣装を替え、アングルを替え、イメージを替えて、その魅力のありったけをさらしてくれる。顔貌よりも、そのフォトジェニックなスタイルが、どれほど映画のスタイリッシュな美に貢献していることか。そして、それらがすべて恐怖に奉仕していることに感心させられた。
プレミアムプライス版 ルチオ・フルチ 幻想殺人 HDマスター版 blu-ray&DVD BOX《数量限定版》
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フォーマット | 色, ドルビー |
コントリビュータ | ロベルト・ジャンヴィッティ, スタンリー・ベイカー, ジャン・ソレル, アルベルト・デ・メンドーサ, シルヴィア・モンティ, ルチオ・フルチ, フロリンダ・ボルカン |
言語 | イタリア語 |
稼働時間 | 1 時間 43 分 |
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登録情報
- 言語 : イタリア語
- 梱包サイズ : 17 x 13.6 x 1.2 cm; 90 g
- EAN : 4589825448618
- 監督 : ルチオ・フルチ
- メディア形式 : 色, ドルビー
- 時間 : 1 時間 43 分
- 発売日 : 2022/8/30
- 出演 : フロリンダ・ボルカン, スタンリー・ベイカー, ジャン・ソレル, アルベルト・デ・メンドーサ, シルヴィア・モンティ
- 字幕: : 日本語
- 言語 : イタリア語 (Dolby Digital 2.0 Stereo)
- 販売元 : 映像文化社
- ASIN : B0B4FV384G
- ディスク枚数 : 2
- Amazon 売れ筋ランキング: - 82,280位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 6,877位ブルーレイ 外国映画
- - 20,838位外国映画 (DVD)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年12月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年12月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ホラー映画監督のイメージが強かったのてすが、こんな作品もつくれるのですね。ツッコミどころもありますが、ジャッロ好きなので良かったです。
2020年11月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年版のニューライン版DVD(旧版)と本品(新版)の映像を比較した場合、本品の映像の方が高画質である事は先行なさるレビューどおりで、その点だけでも「買い」のディスクである事は間違いありません。
それに旧版と比べて新版の解像度が向上しているだけではなく、そもそも素材が違っていました。旧版のクレジットタイトルは白文字なのに対して、新版は黄色字で、更に旧版は題名も他のクレジット同様のフォントであっさりしたゴシック体ですが、新版はイタリア版デザインを踏襲した「如何にも題名らしい」カッコ良さがあり、消える時もウニャウニャ〜と文字同士が混ざり合って揺れながら画面に広がり消える違いがあるし、旧版の冒頭の商標は北米での配給権を有していたアメリカン・インターナショナルですが、新版はスタジオ・カナルの違いがあるので、二種のディスクのソース元が違っているのは明らかかと。
あと翻訳も異なるので、字幕も違っています。以下は冒頭、主人公キャロル(フロリンダ・ボルカン)が悪夢の中に現れた近隣に住む美女(アニタ・ストリンバーグ)に誘導されるがままエロティックな関係となり身悶えて目覚め、自室で手紙を認めている最中、部屋にやって来た夫フランク(ジャン・ソレル)の連れ子(?)ジョーンとの会話に付けられている英語版、イタリア語版双方の翻訳違いです。
●旧版/英語版字幕●
(自室の扉をノックする音)
キャロル「入って フランク」
ジョーン「パパはノックなんてしないわ」
キャロル「いいのよ 礼儀は心得ているから」
ジョーン「夫婦でしょ」
キャロル「夫婦でも礼儀は大事よ」
ジョーン「薬をもらうわよ」
●新版/英語版字幕●
(自室の扉をノックする音)
キャロル「フランクね どうぞ」
ジョーン「パパにもノックさせるの?」
キャロル「強制じゃないわ あなたのパパは紳士なの」
ジョーン「あなたの夫でしょ」
キャロル「夫と紳士は両立するわ」
ジョーン「薬を取りに来たの」
で、双方のイタリア語の翻訳は上記した場面では同じ訳され方で、字幕も同じなのですが、最後のジョーンの台詞のみ違っており、以下のような違いが生じています。
●旧版/イタリア語版字幕●
ジョーン「アスピリンをもらっても?」
●新版/イタリア語版字幕●
ジョーン「アスピリンをちょうだい」
以後もそこかしこで翻訳違い、台詞違いがありますので、字幕の種類にこだわりがあるようでしたら、収録素材も違いますし、新旧共に買い求めるのも一興ではないかと、個人的には思っいます。
加え、旧版では豊富な映像特典が閲覧可能ですし、特に40分を越える2003年収録のメイキング・ドキュメンタリーは一見の価値は十分にあり、ボルカン、ソレル、男女のヒッピー(マイク・ケネディ/ペニー・ブラウン)、特殊効果担当のカルロ・ランバルディ、メイク担当フランコ・ディ・ジロラモ等の述懐インタビューがあり、ランバルディが実際に本編で使用したモーター仕掛けで動くコウモリ(←欲しい!)を見せてくれたり(38体も作ったんだって)、本編が好きなら楽しい時間が得られること受け合いです。
他にも本編とは無関係のボルカンとストリンバーグのヘアヌード・フォトギャラリーもあったり(!)と、封入紙もペラ一枚だが解説書も付属していますし、綺麗な映像を最重要視するだけならば新版のみの購入止まりでもよいでしょうけど、実際に作品に携わった方々の貴重な証言やイタリア語版オープニング・クレジット、劇場予告編も併せて見てみたいなら、旧版の存在も捨てて置けない貴重さを含んでおり、予算が許せば、購入をオススメしたいですね。
それから、旧版の本編映像が粗悪とのいくつかの書き込みがありますが、私自身は「それほどでもない」との印象で、多少、粒子感が目立ったり、所々にフィルム傷、パチパチ・チラチラする塵ノイズは散見出来ますが、細部は比較的はっきりとしていますし、旧版に収録されている劇場予告編の映像(解像度)はホントにビデオテープ並の不明瞭さが爆発しているから、その予告編の解像度が本編もなら「画質最悪」の意見にも同意できるとこですが、先に申したようにノイズは出るけれど、本編そのものの解像度が「酷い」とまでは言えないのでは?との思いです。
それに旧版と比べて新版の解像度が向上しているだけではなく、そもそも素材が違っていました。旧版のクレジットタイトルは白文字なのに対して、新版は黄色字で、更に旧版は題名も他のクレジット同様のフォントであっさりしたゴシック体ですが、新版はイタリア版デザインを踏襲した「如何にも題名らしい」カッコ良さがあり、消える時もウニャウニャ〜と文字同士が混ざり合って揺れながら画面に広がり消える違いがあるし、旧版の冒頭の商標は北米での配給権を有していたアメリカン・インターナショナルですが、新版はスタジオ・カナルの違いがあるので、二種のディスクのソース元が違っているのは明らかかと。
あと翻訳も異なるので、字幕も違っています。以下は冒頭、主人公キャロル(フロリンダ・ボルカン)が悪夢の中に現れた近隣に住む美女(アニタ・ストリンバーグ)に誘導されるがままエロティックな関係となり身悶えて目覚め、自室で手紙を認めている最中、部屋にやって来た夫フランク(ジャン・ソレル)の連れ子(?)ジョーンとの会話に付けられている英語版、イタリア語版双方の翻訳違いです。
●旧版/英語版字幕●
(自室の扉をノックする音)
キャロル「入って フランク」
ジョーン「パパはノックなんてしないわ」
キャロル「いいのよ 礼儀は心得ているから」
ジョーン「夫婦でしょ」
キャロル「夫婦でも礼儀は大事よ」
ジョーン「薬をもらうわよ」
●新版/英語版字幕●
(自室の扉をノックする音)
キャロル「フランクね どうぞ」
ジョーン「パパにもノックさせるの?」
キャロル「強制じゃないわ あなたのパパは紳士なの」
ジョーン「あなたの夫でしょ」
キャロル「夫と紳士は両立するわ」
ジョーン「薬を取りに来たの」
で、双方のイタリア語の翻訳は上記した場面では同じ訳され方で、字幕も同じなのですが、最後のジョーンの台詞のみ違っており、以下のような違いが生じています。
●旧版/イタリア語版字幕●
ジョーン「アスピリンをもらっても?」
●新版/イタリア語版字幕●
ジョーン「アスピリンをちょうだい」
以後もそこかしこで翻訳違い、台詞違いがありますので、字幕の種類にこだわりがあるようでしたら、収録素材も違いますし、新旧共に買い求めるのも一興ではないかと、個人的には思っいます。
加え、旧版では豊富な映像特典が閲覧可能ですし、特に40分を越える2003年収録のメイキング・ドキュメンタリーは一見の価値は十分にあり、ボルカン、ソレル、男女のヒッピー(マイク・ケネディ/ペニー・ブラウン)、特殊効果担当のカルロ・ランバルディ、メイク担当フランコ・ディ・ジロラモ等の述懐インタビューがあり、ランバルディが実際に本編で使用したモーター仕掛けで動くコウモリ(←欲しい!)を見せてくれたり(38体も作ったんだって)、本編が好きなら楽しい時間が得られること受け合いです。
他にも本編とは無関係のボルカンとストリンバーグのヘアヌード・フォトギャラリーもあったり(!)と、封入紙もペラ一枚だが解説書も付属していますし、綺麗な映像を最重要視するだけならば新版のみの購入止まりでもよいでしょうけど、実際に作品に携わった方々の貴重な証言やイタリア語版オープニング・クレジット、劇場予告編も併せて見てみたいなら、旧版の存在も捨てて置けない貴重さを含んでおり、予算が許せば、購入をオススメしたいですね。
それから、旧版の本編映像が粗悪とのいくつかの書き込みがありますが、私自身は「それほどでもない」との印象で、多少、粒子感が目立ったり、所々にフィルム傷、パチパチ・チラチラする塵ノイズは散見出来ますが、細部は比較的はっきりとしていますし、旧版に収録されている劇場予告編の映像(解像度)はホントにビデオテープ並の不明瞭さが爆発しているから、その予告編の解像度が本編もなら「画質最悪」の意見にも同意できるとこですが、先に申したようにノイズは出るけれど、本編そのものの解像度が「酷い」とまでは言えないのでは?との思いです。
2020年11月1日に日本でレビュー済み
8年程前にホラーマニアックスレーベル(ハピネット)から発売された
DVDと比べると映像の綺麗さは雲泥の差で、
旧DVD版所持の方にもオススメできるクオリティかと思いました。
1971年の映画なのに、よくこんな綺麗に残っていたなと吃驚する程
(丁寧な修復がされているのか)フィルムのキズやゴミ等殆ど感じませんでした。
画面の暗い(黒い)部分もザラついたりブロック化する事無く綺麗に見えました。
本編映像と、同社がリリースする他作品の宣伝映像が入っているきりで
旧DVDにあった特典映像やスタッフ・キャスト情報等は一切収録されていません。
パンフレットやリーフレットの類も無く、非常にシンプルな作りです。
社名で検索してもHPが見当たらない事もあり、私の中では依然として
謎のメーカーさんなのですが、少なくとも今回の事から
「ダサジャケットで廉価版を売るメーカー」という印象は無くなりました。
作品内容に関しては他の方が詳しいレビューをされておられますので今更ですが
ルチオ・フルチ監督による、夢か現実か…と不思議な雰囲気漂うジャッロ映画で
過激さよりはどこまでもムーディな、雰囲気重視の作品かと思います。
(とはいえ、絶対に家族で観れる様な映画ではないとも思います)
音声は3種類(英/英/伊)収録されていますが、旧DVD版同様、英語は一部のシーンで
イタリア語吹替えに変わっていました。
本来の音声は英語のハズなので出来れば通して聴きたかったですね。
DVDと比べると映像の綺麗さは雲泥の差で、
旧DVD版所持の方にもオススメできるクオリティかと思いました。
1971年の映画なのに、よくこんな綺麗に残っていたなと吃驚する程
(丁寧な修復がされているのか)フィルムのキズやゴミ等殆ど感じませんでした。
画面の暗い(黒い)部分もザラついたりブロック化する事無く綺麗に見えました。
本編映像と、同社がリリースする他作品の宣伝映像が入っているきりで
旧DVDにあった特典映像やスタッフ・キャスト情報等は一切収録されていません。
パンフレットやリーフレットの類も無く、非常にシンプルな作りです。
社名で検索してもHPが見当たらない事もあり、私の中では依然として
謎のメーカーさんなのですが、少なくとも今回の事から
「ダサジャケットで廉価版を売るメーカー」という印象は無くなりました。
作品内容に関しては他の方が詳しいレビューをされておられますので今更ですが
ルチオ・フルチ監督による、夢か現実か…と不思議な雰囲気漂うジャッロ映画で
過激さよりはどこまでもムーディな、雰囲気重視の作品かと思います。
(とはいえ、絶対に家族で観れる様な映画ではないとも思います)
音声は3種類(英/英/伊)収録されていますが、旧DVD版同様、英語は一部のシーンで
イタリア語吹替えに変わっていました。
本来の音声は英語のハズなので出来れば通して聴きたかったですね。