オープニング以外にはBGMも特殊な撮影技術も無く、純粋に役者の演技とカット割りでサスペンスを盛り上げていく様は実に無駄が無く、観る側も緊張して集中力が途切れません。
主演の2人、愛憎を乗り越えて殺人の為に手を組む正妻と愛人コンビ、ヴェラ・クルーゾーとシモーヌ・シニョレの小柄可憐ブルネットと大柄クールブロンドの組み合わせは素晴らしいです。
この2人の殺人計画の対象とされる学校経営者の夫、ミシェルを演じるポール・ムーリスのハンサムと言って良い外観から滲み出る粘着質の厭らしさが最高に憎々しく、犯罪者である女性陣側に思わず感情移入してしまいます。
ミシェルに心ならずも追従しながらも陰口を叩く教員達や、後半のキーパーソンとなる老探偵を演じたシャルル・ヴァネル、そして最後に重要な余韻を残す虚言癖が有る少年モネを筆頭とする少ない出番ながらしっかりと個性が撮り分けられた生徒達の演技も見事です。
映画ラストの「結末をご友人にお話しに為らない様に。」とテロップが流れる手法は、私はマーヴィン・ルロイ監督の「悪い種子」(1956)が最初だと思い込んでいたのですが、本作が先行して居た事も知る事が出来て幸甚でした。
今回(2011年)HDリマスター版を購入致しましたが、画質はDVDとしては非常に良いです。
ヴェラ・クルーゾー演じるクリスティーナの顔が証拠を焼く為に火を付けた時に影から徐々に浮かび上がるシーンや、彼女が薄絹一枚で暗い校内を彷徨う時の体のシルエットがはっきり観えます。
映像特典は無く、日本語字幕のON/OFFのみですが、中条省平氏による20頁リーフレットが付いています。
小説家谷崎潤一郎が本作とシニョレを好んで居た事、ヒチコックが職業人としてのライバル心をクルーゾーに対して抱いていた事等興味深い記事が読めます。
このレベルの映画なら多少の画質劣化は気に為らず、本作は確かに画質が向上していますが、この時期、このお値段でしたらBlu-Rayで出して頂ければ更に喜びが増したと思います。
P.S.本DVDのジャケットは、ご購入後、明るい場所で角度を変えて御覧になる事をお薦め致します。
悪魔のような女 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督 《スペシャルプライス》 Blu-ray
フォーマット | 字幕付き, ブラック&ホワイト, モノ |
コントリビュータ | ポール・ムーリス, シャルル・ヴァネル, アンリ=ジョルジュ・クルーゾー, シモーヌ・シニョレ, ヴェラ・クルーゾー, ジャン・ブロシャール |
言語 | フランス語 |
稼働時間 | 1 時間 57 分 |
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商品の説明
結末まで持続するスリル。
世界三大映画祭を制したアンリ = ジョルジュ・クルーゾーが送る、極上サスペンス。
4Kリマスター版で蘇る。
スペシャルプライスで再発売!
【物語】
パリ近郊の寄宿学校。
校長のミシェルは妻クリスティーナの莫大な財産に支えられ、その地位を築いていた。
そして、女教師ニコルと公然の愛人関係にあった。
クリスティーナは横暴な彼に心を病んでいく。
同情したニコルは、ある日、ミシェル殺害をクリスティーナに持ちかける。
薬品の入った酒を飲んだミシェルは朦朧とし、二人に浴槽に沈められる…。
原作:ピエール・ボワロー、トーマス・ナルスジャック
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
脚本:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、ジェローム・ジェロミニ
撮影:アルマン・ティラール、ロベール・ジュイヤール
音楽:ジョルジュ・ヴァン・パリス
出演:シモーヌ・シニョレ、ヴェラ・クルーゾー、ポール・ムーリス、シャルル・ヴァネル、ジャン・ブロシャール
1955年 フランス
※本商品に封入特典はございません
登録情報
- アスペクト比 : 1.33:1
- 言語 : フランス語
- 製品サイズ : 30 x 10 x 20 cm; 80 g
- EAN : 4933672255187
- 監督 : アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
- メディア形式 : 字幕付き, ブラック&ホワイト, モノ
- 時間 : 1 時間 57 分
- 発売日 : 2022/3/25
- 出演 : シモーヌ・シニョレ, ヴェラ・クルーゾー, ポール・ムーリス, シャルル・ヴァネル, ジャン・ブロシャール
- 字幕: : 日本語
- 販売元 : IVC
- ASIN : B09QGX1KBZ
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 19,100位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 667位外国のミステリー・サスペンス映画
- - 1,698位外国のドラマ映画
- - 2,238位ブルーレイ 外国映画
- カスタマーレビュー:
イメージ付きのレビュー

5 星
ジメジメ湿度と寒々しさが支配するフランス発の名作スリラーであり、そして・・。
Diabolique. 仏語で「悪魔のような」あるいは「悪魔的な」。フランスの片田舎、横暴な寄宿学校の校長、その妻(ヴェラ・クルーゾー)と校長の愛人(シモーヌ・シニョレ)が織りなすモノクロ犯罪劇。一方でとてもジメジメ、ヌメヌメした何とも言い難い湿度が作品を支配した作品です。寒々しくもありますが、濃密でねっとりした生々しい人間の内面。そして映画のあちこちで登場する水、水、水・・。冒頭の雨、犯行現場のバスタブ、淀んで枯葉の浮いたプール、籐のおかもちから垂れた汁、そして再度のバスタブ・・。くわしくは書けませんが本作には心理的恐怖・焦燥・罪悪感があり、ヒッチ的なドキドキハラハラなサスペンスがあり、ミステリー要素もあり、スリラー、かつショッカーでもあります。女性のしたたかさ・冷酷さ。さまざまな要素をつぎ込んだ娯楽作品としても芳醇な仕上がりです。初見時は、筋や展開を追うだけでも十分に面白さを堪能できます。ビックリさせられるでしょう。他方で映画全体に、寄宿学校のどこかゴシック・ホラー的雰囲気が漂っています。そして少しオカルト的な出来事(亡くなったはずの校長を見たという少年やいわゆる心霊写真等)も織りまぜられ、クルーゾー監督の明確なビジョンのもと、陰鬱なカビくささ・淀んだ空気が感じられます。泥道を歩いているような居心地の悪さ。黒い布を頭から被せられたような閉塞感。湿った布でゆっくり締め上げられていくような息苦しさ。2人の女のざわつく内面ともども、観ているこちらも落ち着かない心持で最後まで引っ張っていかれます。計画に無理がある、偶然に頼っている、老探偵の位置付け等物語上のあらを指摘する方もおられるようですが、2度見ると、上記のような映画全体の肌触りや映画の空気、影を生かし寒々としたモノクロ撮影(アルマン・ティラール。同監督の「恐怖の報酬」もこの方)といった感覚的な表現が勝っていると感じられました。物語を離れても、その豊かな作品世界創出に唸らされます。ジョルジュ・ヴァン・パリスの音楽も(たしか冒頭クレジットのみですが)後年の「オーメン」を少し思わせるボーイズ・クワイアを使用し、悪魔的、Diaboliqueな感じで、これから始まる冷酷な所業を予感させて秀逸です。以下、★まで核心に触れています。有名な(?)オチの後に、映画をひっくり返すかのような少年の一言。一気に本作は西洋「怪談」となったように思われました。校長のように、実は・・と深読みも可能ですが、ここは怪談として締めくくったと見ました。★クルーゾー監督には後に「恐怖の報酬」という傑作があり、以前にも「情婦マノン」「犯罪河岸」という名作もあります。本作は「恐怖の報酬」と人気を二分する名作と言われています。先行レビュアーさまも指摘されているように、当時、監督夫人であった、妻役ヴェラ・クルーゾーのかぼそさ・弱さと愛人役のシモーヌ・シニョレのふてぶてしさ・強さの対比が見事です。シャルル・ヴァネルも、後のあの名刑事の原型のようで印象的なキャラでした。ヒッチコックにも勝るとも劣らない、フランスから生まれた名作スリラーをご堪能ください。Les Diaboliques 1955 FR
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2011年6月25日に日本でレビュー済み
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2024年2月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルの意味がラスト間際でようやく分かるという凝った作りになっていますが、逆に言うと終盤まで間延びした感覚を覚えてしまうため途中で見るのをやめてしまう人も少なからずいるのではないかと想像します。非常にもったいないですが、あまり面白く無い中盤を耐えた人だけがラストの衝撃を味わうことができます。しかもその展開をさらにドンデン返しするような余韻も残していて一気に評価が上がりました。
2022年11月16日に日本でレビュー済み
映画の冒頭から、妻と愛人による夫の殺人計画がはじまっている。殺人計画と実行を描きながら、人物関係を分からせていくというやり方は、無駄がなくていいようにも思うが、なぜこの二人が共謀して殺人を犯すのか、いまひとつ腑に落ちない。妻と愛人、夫の間の愛憎関係の説明が足りないと思う。そこが、致命的というか、はじめからストーリーの底が割れているように感じる。なので、サスペンスを盛り上げるために、いろいろと演出に手を尽くしてはいるが、ちょっと白っとした感じでみてしまった。だって、ねェ。ああいう展開になっていったら、やっぱり疑うんじゃない?普通は・・・。登場人物は、全然わかってないようだけど。「恐怖の報酬」で名演だったシャルル・ヴァネルが出番は少ないが、探偵役でいい味を出していた。原作は、ヒッチコックの「めまい」でも知られるボワロー=ナルスジャック。
2011年6月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画は、寄宿舎のある学校の食事の場面から始まります。黒のサングラスの二コル(シモーヌ・シニョレ)、グラスを外すと目の周りに殴られたような痣、大柄いかにもファム・ファタルそのもの。そして、食時の場面、繊細で純真そうなクリステーナ(ヴェラ・クルーゾー、監督の奥さん)、男前だが、冷酷で一癖ありそうな夫のミシェル(ポール・ムーリス)、二コル(ミシェルの情婦)、2人の男性教師でテーブルに着くきますが、腐りかけのタラを夫に無理やり食べさせられるクリステーナ・・・キャステイング、話の導入が見事です。そして、ありえない話ですが、奥方と二コルは、共謀し冷酷、吝嗇、凶暴なミシェルを亡き者にしようとしているんです。嫌がるクリステーナを説き伏せ、離婚話で夫を呼び寄せ、睡眠薬入りのスコッチを飲ませ、バスタブで溺死させます。そして、学校のプールに沈めます。しかし、その後、夫のスーツのクリーニングが届いたり、写真に夫らしき姿が売っていたり、最後はパチンコで窓を割った為校長に罰を与えられたという生徒まで出現し・・・プールにボールが落ちたり、鍵を探しにもぐったり、プールの水を抜いたり、セーヌ河に死体があがったり・・・伏線の張り方がうまいですね!!そして・・・どんでん返しの連続で、最後は、怪談映画にまで昇華!!
実はこの映画、幼稚園のとき父に連れられて見に行っているんです。父はこのての映画が大好きで、知りすぎた男、北北西に進路をとれ、世界残酷物語、放射能X,ラドン、マタンゴ等、悪魔・・は、バスタブに押し込んで白目をむくシーンが怖く(全て怖かったが)、殆ど正視できませんでしたが、凄く印象に残りました。長じて、年代等でおおよその見当をつけ、ヴィデオを購入(高かった)、見事ビンゴでした。しかし、こんな映画よう見せるわ!!おかげでトラウマになってしまったやないか・・
原作はボワロー&ナルスジャック、タイトルは、バルベー・ドルヴィイの小説から取られています。(薔薇十次社がオリジナル、それとも国書刊行会?)ヒッチコックはこの映画を見て、相当ショックを受け悔しい思いをしたと中条さんは述べていますが、ヒッチコックとクルーゾーは似ているようで似ていない、というのは、クルーゾーは、純粋なショッカー、サスペンスで、ヒッチ・・は、それを英国流ブラックユーモアーでくるんでいるからです。ちなみに中条さんのエッセイなかなか優れものです!
最後にこの映画は、パブリック・ドメインに成っています。紀伊国屋さんそこを踏まえて、値段もう少し何とかなりませんか!!、満点で無いのは、このためです。しかし、画質は、黒つぶれも無く、良好です。
実はこの映画、幼稚園のとき父に連れられて見に行っているんです。父はこのての映画が大好きで、知りすぎた男、北北西に進路をとれ、世界残酷物語、放射能X,ラドン、マタンゴ等、悪魔・・は、バスタブに押し込んで白目をむくシーンが怖く(全て怖かったが)、殆ど正視できませんでしたが、凄く印象に残りました。長じて、年代等でおおよその見当をつけ、ヴィデオを購入(高かった)、見事ビンゴでした。しかし、こんな映画よう見せるわ!!おかげでトラウマになってしまったやないか・・
原作はボワロー&ナルスジャック、タイトルは、バルベー・ドルヴィイの小説から取られています。(薔薇十次社がオリジナル、それとも国書刊行会?)ヒッチコックはこの映画を見て、相当ショックを受け悔しい思いをしたと中条さんは述べていますが、ヒッチコックとクルーゾーは似ているようで似ていない、というのは、クルーゾーは、純粋なショッカー、サスペンスで、ヒッチ・・は、それを英国流ブラックユーモアーでくるんでいるからです。ちなみに中条さんのエッセイなかなか優れものです!
最後にこの映画は、パブリック・ドメインに成っています。紀伊国屋さんそこを踏まえて、値段もう少し何とかなりませんか!!、満点で無いのは、このためです。しかし、画質は、黒つぶれも無く、良好です。
2011年5月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
HDリマスターで画質がどれくらい綺麗になってるか楽しみです。
私が観たのは数十年前、しかもレンタルビデオでした。すごい展開に興奮したのを覚えています。
現在廃盤で、観たくても観れなかったのでこの再発は最高にうれしい。
ヒッチコックタイプのサスペンスです。
私が観たのは数十年前、しかもレンタルビデオでした。すごい展開に興奮したのを覚えています。
現在廃盤で、観たくても観れなかったのでこの再発は最高にうれしい。
ヒッチコックタイプのサスペンスです。
2011年9月12日に日本でレビュー済み
今年、本作の
悪魔のような女 HDニューマスター版 [DVD
]が出て、購入されるのであれば、高画質で言語がフランス語だから、そちらをおすすめ。
エンディングに流れるテロップ「決して結末は話さないように〜」、それだけ、背筋が凍りつくほど怖ろしくて衝撃的なラスト・シーン。もしかしたら、まだ・・と思わせる台詞も憎かった。
フランスの大女優シモーヌ・シニョレ(夫はイブ・モンタン)は、誰もが認めるような美人女優ではないけれど、インテリで大戦中はレジスタンス活動を支援していたという、気骨がある粋な女優。
身のこなしや話し方が実にシャープでクールだと思う。
ストーリーは、学校の経営者で教師をする・クリスティーヌ(V・クルーゾー、監督の妻)と、クリスティーヌの夫で利己的で性悪な校長・ミッシェル、夫の愛人の教師・ニコール(S・シニョレ)の3人が軸。
妻も愛人も、男が憎くてたまらず、二人で男を消すための怖ろしい計画を企てる。
作られてから長い歳月を経ているのに、画面から目を離せない緊迫した展開は、さすがクルーゾ監督。
S・ストーン、I・アジャーニ共演でリメイクされているが、オリジナルを超えるのは無理だったよう。
この映画に出演後、現実にV・クルーゾーに起きた事(映画「真実」のB・バルドーが原因という一説ありetc)を知れば、もっと怖さが倍増するかもしれない。
エンディングに流れるテロップ「決して結末は話さないように〜」、それだけ、背筋が凍りつくほど怖ろしくて衝撃的なラスト・シーン。もしかしたら、まだ・・と思わせる台詞も憎かった。
フランスの大女優シモーヌ・シニョレ(夫はイブ・モンタン)は、誰もが認めるような美人女優ではないけれど、インテリで大戦中はレジスタンス活動を支援していたという、気骨がある粋な女優。
身のこなしや話し方が実にシャープでクールだと思う。
ストーリーは、学校の経営者で教師をする・クリスティーヌ(V・クルーゾー、監督の妻)と、クリスティーヌの夫で利己的で性悪な校長・ミッシェル、夫の愛人の教師・ニコール(S・シニョレ)の3人が軸。
妻も愛人も、男が憎くてたまらず、二人で男を消すための怖ろしい計画を企てる。
作られてから長い歳月を経ているのに、画面から目を離せない緊迫した展開は、さすがクルーゾ監督。
S・ストーン、I・アジャーニ共演でリメイクされているが、オリジナルを超えるのは無理だったよう。
この映画に出演後、現実にV・クルーゾーに起きた事(映画「真実」のB・バルドーが原因という一説ありetc)を知れば、もっと怖さが倍増するかもしれない。
2014年12月15日に日本でレビュー済み
Diabolique. 仏語で「悪魔のような」あるいは「悪魔的な」。フランスの片田舎、横暴な寄宿学校の校長、その妻(ヴェラ・クルーゾー)と校長の愛人(シモーヌ・シニョレ)が織りなすモノクロ犯罪劇。
一方でとてもジメジメ、ヌメヌメした何とも言い難い湿度が作品を支配した作品です。寒々しくもありますが、濃密でねっとりした生々しい人間の内面。そして映画のあちこちで登場する水、水、水・・。冒頭の雨、犯行現場のバスタブ、淀んで枯葉の浮いたプール、籐のおかもちから垂れた汁、そして再度のバスタブ・・。
くわしくは書けませんが本作には心理的恐怖・焦燥・罪悪感があり、ヒッチ的なドキドキハラハラなサスペンスがあり、ミステリー要素もあり、スリラー、かつショッカーでもあります。女性のしたたかさ・冷酷さ。さまざまな要素をつぎ込んだ娯楽作品としても芳醇な仕上がりです。初見時は、筋や展開を追うだけでも十分に面白さを堪能できます。ビックリさせられるでしょう。
他方で映画全体に、寄宿学校のどこかゴシック・ホラー的雰囲気が漂っています。そして少しオカルト的な出来事(亡くなったはずの校長を見たという少年やいわゆる心霊写真等)も織りまぜられ、クルーゾー監督の明確なビジョンのもと、陰鬱なカビくささ・淀んだ空気が感じられます。泥道を歩いているような居心地の悪さ。黒い布を頭から被せられたような閉塞感。湿った布でゆっくり締め上げられていくような息苦しさ。2人の女のざわつく内面ともども、観ているこちらも落ち着かない心持で最後まで引っ張っていかれます。
計画に無理がある、偶然に頼っている、老探偵の位置付け等物語上のあらを指摘する方もおられるようですが、2度見ると、上記のような映画全体の肌触りや映画の空気、影を生かし寒々としたモノクロ撮影(アルマン・ティラール。同監督の「恐怖の報酬」もこの方)といった感覚的な表現が勝っていると感じられました。物語を離れても、その豊かな作品世界創出に唸らされます。
ジョルジュ・ヴァン・パリスの音楽も(たしか冒頭クレジットのみですが)後年の「オーメン」を少し思わせるボーイズ・クワイアを使用し、悪魔的、Diaboliqueな感じで、これから始まる冷酷な所業を予感させて秀逸です。
以下、★まで核心に触れています。
有名な(?)オチの後に、映画をひっくり返すかのような少年の一言。一気に本作は西洋「怪談」となったように思われました。校長のように、実は・・と深読みも可能ですが、ここは怪談として締めくくったと見ました。★
クルーゾー監督には後に「恐怖の報酬」という傑作があり、以前にも「情婦マノン」「犯罪河岸」という名作もあります。本作は「恐怖の報酬」と人気を二分する名作と言われています。先行レビュアーさまも指摘されているように、当時、監督夫人であった、妻役ヴェラ・クルーゾーのかぼそさ・弱さと愛人役のシモーヌ・シニョレのふてぶてしさ・強さの対比が見事です。シャルル・ヴァネルも、後のあの名刑事の原型のようで印象的なキャラでした。ヒッチコックにも勝るとも劣らない、フランスから生まれた名作スリラーをご堪能ください。
Les Diaboliques 1955 FR
一方でとてもジメジメ、ヌメヌメした何とも言い難い湿度が作品を支配した作品です。寒々しくもありますが、濃密でねっとりした生々しい人間の内面。そして映画のあちこちで登場する水、水、水・・。冒頭の雨、犯行現場のバスタブ、淀んで枯葉の浮いたプール、籐のおかもちから垂れた汁、そして再度のバスタブ・・。
くわしくは書けませんが本作には心理的恐怖・焦燥・罪悪感があり、ヒッチ的なドキドキハラハラなサスペンスがあり、ミステリー要素もあり、スリラー、かつショッカーでもあります。女性のしたたかさ・冷酷さ。さまざまな要素をつぎ込んだ娯楽作品としても芳醇な仕上がりです。初見時は、筋や展開を追うだけでも十分に面白さを堪能できます。ビックリさせられるでしょう。
他方で映画全体に、寄宿学校のどこかゴシック・ホラー的雰囲気が漂っています。そして少しオカルト的な出来事(亡くなったはずの校長を見たという少年やいわゆる心霊写真等)も織りまぜられ、クルーゾー監督の明確なビジョンのもと、陰鬱なカビくささ・淀んだ空気が感じられます。泥道を歩いているような居心地の悪さ。黒い布を頭から被せられたような閉塞感。湿った布でゆっくり締め上げられていくような息苦しさ。2人の女のざわつく内面ともども、観ているこちらも落ち着かない心持で最後まで引っ張っていかれます。
計画に無理がある、偶然に頼っている、老探偵の位置付け等物語上のあらを指摘する方もおられるようですが、2度見ると、上記のような映画全体の肌触りや映画の空気、影を生かし寒々としたモノクロ撮影(アルマン・ティラール。同監督の「恐怖の報酬」もこの方)といった感覚的な表現が勝っていると感じられました。物語を離れても、その豊かな作品世界創出に唸らされます。
ジョルジュ・ヴァン・パリスの音楽も(たしか冒頭クレジットのみですが)後年の「オーメン」を少し思わせるボーイズ・クワイアを使用し、悪魔的、Diaboliqueな感じで、これから始まる冷酷な所業を予感させて秀逸です。
以下、★まで核心に触れています。
有名な(?)オチの後に、映画をひっくり返すかのような少年の一言。一気に本作は西洋「怪談」となったように思われました。校長のように、実は・・と深読みも可能ですが、ここは怪談として締めくくったと見ました。★
クルーゾー監督には後に「恐怖の報酬」という傑作があり、以前にも「情婦マノン」「犯罪河岸」という名作もあります。本作は「恐怖の報酬」と人気を二分する名作と言われています。先行レビュアーさまも指摘されているように、当時、監督夫人であった、妻役ヴェラ・クルーゾーのかぼそさ・弱さと愛人役のシモーヌ・シニョレのふてぶてしさ・強さの対比が見事です。シャルル・ヴァネルも、後のあの名刑事の原型のようで印象的なキャラでした。ヒッチコックにも勝るとも劣らない、フランスから生まれた名作スリラーをご堪能ください。
Les Diaboliques 1955 FR

Diabolique. 仏語で「悪魔のような」あるいは「悪魔的な」。フランスの片田舎、横暴な寄宿学校の校長、その妻(ヴェラ・クルーゾー)と校長の愛人(シモーヌ・シニョレ)が織りなすモノクロ犯罪劇。
一方でとてもジメジメ、ヌメヌメした何とも言い難い湿度が作品を支配した作品です。寒々しくもありますが、濃密でねっとりした生々しい人間の内面。そして映画のあちこちで登場する水、水、水・・。冒頭の雨、犯行現場のバスタブ、淀んで枯葉の浮いたプール、籐のおかもちから垂れた汁、そして再度のバスタブ・・。
くわしくは書けませんが本作には心理的恐怖・焦燥・罪悪感があり、ヒッチ的なドキドキハラハラなサスペンスがあり、ミステリー要素もあり、スリラー、かつショッカーでもあります。女性のしたたかさ・冷酷さ。さまざまな要素をつぎ込んだ娯楽作品としても芳醇な仕上がりです。初見時は、筋や展開を追うだけでも十分に面白さを堪能できます。ビックリさせられるでしょう。
他方で映画全体に、寄宿学校のどこかゴシック・ホラー的雰囲気が漂っています。そして少しオカルト的な出来事(亡くなったはずの校長を見たという少年やいわゆる心霊写真等)も織りまぜられ、クルーゾー監督の明確なビジョンのもと、陰鬱なカビくささ・淀んだ空気が感じられます。泥道を歩いているような居心地の悪さ。黒い布を頭から被せられたような閉塞感。湿った布でゆっくり締め上げられていくような息苦しさ。2人の女のざわつく内面ともども、観ているこちらも落ち着かない心持で最後まで引っ張っていかれます。
計画に無理がある、偶然に頼っている、老探偵の位置付け等物語上のあらを指摘する方もおられるようですが、2度見ると、上記のような映画全体の肌触りや映画の空気、影を生かし寒々としたモノクロ撮影(アルマン・ティラール。同監督の「恐怖の報酬」もこの方)といった感覚的な表現が勝っていると感じられました。物語を離れても、その豊かな作品世界創出に唸らされます。
ジョルジュ・ヴァン・パリスの音楽も(たしか冒頭クレジットのみですが)後年の「オーメン」を少し思わせるボーイズ・クワイアを使用し、悪魔的、Diaboliqueな感じで、これから始まる冷酷な所業を予感させて秀逸です。
以下、★まで核心に触れています。
有名な(?)オチの後に、映画をひっくり返すかのような少年の一言。一気に本作は西洋「怪談」となったように思われました。校長のように、実は・・と深読みも可能ですが、ここは怪談として締めくくったと見ました。★
クルーゾー監督には後に「恐怖の報酬」という傑作があり、以前にも「情婦マノン」「犯罪河岸」という名作もあります。本作は「恐怖の報酬」と人気を二分する名作と言われています。先行レビュアーさまも指摘されているように、当時、監督夫人であった、妻役ヴェラ・クルーゾーのかぼそさ・弱さと愛人役のシモーヌ・シニョレのふてぶてしさ・強さの対比が見事です。シャルル・ヴァネルも、後のあの名刑事の原型のようで印象的なキャラでした。ヒッチコックにも勝るとも劣らない、フランスから生まれた名作スリラーをご堪能ください。
Les Diaboliques 1955 FR
一方でとてもジメジメ、ヌメヌメした何とも言い難い湿度が作品を支配した作品です。寒々しくもありますが、濃密でねっとりした生々しい人間の内面。そして映画のあちこちで登場する水、水、水・・。冒頭の雨、犯行現場のバスタブ、淀んで枯葉の浮いたプール、籐のおかもちから垂れた汁、そして再度のバスタブ・・。
くわしくは書けませんが本作には心理的恐怖・焦燥・罪悪感があり、ヒッチ的なドキドキハラハラなサスペンスがあり、ミステリー要素もあり、スリラー、かつショッカーでもあります。女性のしたたかさ・冷酷さ。さまざまな要素をつぎ込んだ娯楽作品としても芳醇な仕上がりです。初見時は、筋や展開を追うだけでも十分に面白さを堪能できます。ビックリさせられるでしょう。
他方で映画全体に、寄宿学校のどこかゴシック・ホラー的雰囲気が漂っています。そして少しオカルト的な出来事(亡くなったはずの校長を見たという少年やいわゆる心霊写真等)も織りまぜられ、クルーゾー監督の明確なビジョンのもと、陰鬱なカビくささ・淀んだ空気が感じられます。泥道を歩いているような居心地の悪さ。黒い布を頭から被せられたような閉塞感。湿った布でゆっくり締め上げられていくような息苦しさ。2人の女のざわつく内面ともども、観ているこちらも落ち着かない心持で最後まで引っ張っていかれます。
計画に無理がある、偶然に頼っている、老探偵の位置付け等物語上のあらを指摘する方もおられるようですが、2度見ると、上記のような映画全体の肌触りや映画の空気、影を生かし寒々としたモノクロ撮影(アルマン・ティラール。同監督の「恐怖の報酬」もこの方)といった感覚的な表現が勝っていると感じられました。物語を離れても、その豊かな作品世界創出に唸らされます。
ジョルジュ・ヴァン・パリスの音楽も(たしか冒頭クレジットのみですが)後年の「オーメン」を少し思わせるボーイズ・クワイアを使用し、悪魔的、Diaboliqueな感じで、これから始まる冷酷な所業を予感させて秀逸です。
以下、★まで核心に触れています。
有名な(?)オチの後に、映画をひっくり返すかのような少年の一言。一気に本作は西洋「怪談」となったように思われました。校長のように、実は・・と深読みも可能ですが、ここは怪談として締めくくったと見ました。★
クルーゾー監督には後に「恐怖の報酬」という傑作があり、以前にも「情婦マノン」「犯罪河岸」という名作もあります。本作は「恐怖の報酬」と人気を二分する名作と言われています。先行レビュアーさまも指摘されているように、当時、監督夫人であった、妻役ヴェラ・クルーゾーのかぼそさ・弱さと愛人役のシモーヌ・シニョレのふてぶてしさ・強さの対比が見事です。シャルル・ヴァネルも、後のあの名刑事の原型のようで印象的なキャラでした。ヒッチコックにも勝るとも劣らない、フランスから生まれた名作スリラーをご堪能ください。
Les Diaboliques 1955 FR
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2013年1月30日に日本でレビュー済み
この映画に対抗してヒッチコックが『サイコ』を撮ったらしいので観てみたが、
それほどの出来とも思えない。
感情移入できるような魅力が登場人物にないせいか。
おそらく半分ぐらいの人は早いうちに展開が読めてしまうと思う。
しかも、展開は読めてしまうものの、その展開に納得もできないのである。
妻と愛人が共謀して夫を殺す、という設定自体にそもそも無理がある。
それほどの出来とも思えない。
感情移入できるような魅力が登場人物にないせいか。
おそらく半分ぐらいの人は早いうちに展開が読めてしまうと思う。
しかも、展開は読めてしまうものの、その展開に納得もできないのである。
妻と愛人が共謀して夫を殺す、という設定自体にそもそも無理がある。