★キネマ旬報ベスト・テン第9位。
取り返すことのできない、滅びゆくものへの痛切なる思い。
【introduction】
福永武彦の同名小説を大林宣彦が16ミリで映画化した文芸作。運河が張り巡らされた古びたたたずまいを背景にして、死んだような町の中で生きる男女の諦念にも似た感情の糸が、滅びゆくものへの愛情を込めて描かれる。
【story】
江口は大学生のころ、卒論を書くためにひと夏を運河のある古い町で過ごした。親戚から紹介された貝原家に逗留した江口は、その夜、女のすすり泣きの声を耳にする。翌日、当家の次女・安子から家族を紹介されるが、一緒に暮らしているはずの長女の郁代の姿はない。船に乗って運河を下る江口に安子は「この町はもう死んだ町だ」と言う。江口はその言葉の裏にあるものを次第に知ることになる・・・。