食わず嫌いで観ていなかった彩輝直さん主演のエリザベートをこのデジタルリマスター版
で初めて観ました。食わず嫌いはいけないと思いました。
彩輝さんのイメージが短期間トップであまり男役らしくない容姿にばかり注目がいき、
失礼ながらイメージが良くなかったのですが、このエリザベートは圧巻でした。
特に瀬奈じゅんさん演じるタイトルロール、エリザベートとの相性が良かったです。
瀬奈さんは男役でありながら02年版で花組でルキーニ、05年版ではエリザベート、
退団前の09年版ではトートの3役を演じるという偉業を成し遂げていますが、
やはり男役だけあって低い声質と男性らしさ(たくましさ?)も感じるエリザベートですが
中性的な人外の妖しい魅力を持つ彩輝トートとの相性は良かったと思います。
むしろ瀬奈シシィ(エリザベートの愛称)を演じさせるためにこの月組での上演に
なったようにも感じます。中性的人外×男性的たくましさの相性で演出家の小池先生が
月組上演にしたような思惑を感じました。
彩輝さんも白と黒のメッシュの長髪の鬘もお似合いでしたし、スタイルも良く
歌唱も本人比では頑張っていたと思います。重厚な瀬奈エリザベートと声の相性も
良かったです。
瀬奈さん演じるエリザベートは、やはり肩幅やドレスの所作は男役といった逞しさを
覗かせる時もありましたが、女役への抜擢ということで力が入っていたと思います。
少し疑問なのが歌うまでもない彼女に何故3役こなすことをこだわったのかが不思議ですが
与えられた課題や役にはしっかりと及第点で答える演技と出来だったと思います。
フランツ・ヨーゼフ役の専科の初風さんと美々さん演じる姑役ゾフィーは文句なしの歌唱力
と演技でした。霧矢さん演じる暗殺者ルキーニも狂気という点では控えめな演技で
明るい印象でしたが、歌がうまいので聞きごたえがあります。
あと、特筆すべきは皇太子ルドルフ役の大空祐飛さんの演技でしょう。大空さんは現役時代
どちらかというと歌唱は苦手でしたが、スタイル抜群の軍服の着こなしで脆い繊細な
ルドルフを演じていました。もうこの時は若手と言えないキャリアだったと思いますが
98年版の朝海ルドルフに通じる繊細で苦悩する貴公子役で、この演技が後の宙組トップへと
躍進するきっかけになったと思います。
彩輝トートの中性的で、この方の魅力が余すところなく出ている作品です。
瀬奈エリザベートとの相性も良く、彩輝さんの花道的に演じられた雰囲気もありますが
脇役の歌うまが支え、脆い繊細な演技のルドルフの演技も光るこの作品を
食わず嫌いでわたしのように観ていない方にはぜひ観ていただきたいです。
画質もブルーレイのリマスター版でさらに良くなっています。稽古場風景などは
ありませんが、作品だけ楽しみたい方はぜひご覧ください。
あと、Prime Videoにもこの作品を入れて欲しいです。お願いします。