80年代の映像であることを考えれば「よくこんな綺麗な映像が残っていたな」と驚いた。
音質も問題ない、高音質での録音状態。
そして、エヴァンス最高のトリオの最高のステージが本作である。
以前、商品化されたこのトリオのライヴはどちらかというと大きめのBARでの演奏、さらに録音録画されていることをかなり意識していたが、今回の会場はホールクラスのデカさでお客さんがギュウギュウ詰めの満員。
映像はステージ袖からのトリオ登場から始まり、まさにライヴの開幕といった興奮が伝わってくる。
一曲一曲が終わるたびに大拍手、それが会場一体となって拍手のリズムが揃い「もっともっと!」と観客が求めている。
エヴァンスは観客に深々と一礼してスマイル。
観客が静まってから次の曲へと。
「My Romance」での最初のピークを終えるとメンバーはステージ袖へ。(マークがベースを優しく床に横たえる様子も貴重である)
その後、エヴァンスが登場し「I Loves You Porgy」のピアノソロ。
次の「Up with The Lark」はマークとの2人でのプレイ。
そして「Nardis」で今ステージは最高潮へ!!
個人的に「Paris Concert」の映像版を観ている気分で興奮した。
そして、アンコールを経て、終幕。
映像には拍手がやまない会場からお客さんがゆっくり立ち去っていく様子、拍手もまばらになり消えていく様子を最後にfinとなる。
まさにライヴ!!これぞライヴといったビル・エヴァンス・ラストトリオ最高の瞬間を捉えた貴重な映像である。
が、タイトルにも書いたがカメラワークが悪過ぎる!!
どこが酷いって、エヴァンスの手元が全く映らない!!!
顔のアップや、腕から上の映像はたっぷりあるのだが、とにかく手元が映らないのだ。
一JAZZピアニストとしてこれほどフラストレーションの溜まることもない。
エヴァンスのソロが終わる間際の数秒にカメラで手元が映ってソッコで消えたときはもう意図的にイジワルしてるんじゃないか?と本当に疑った。
その代りと言ってはなんだがマークがとにかく映っている。
ソロはパーフェクト、その他二人がソロを取っている際に聴きっている表情などとにかくマーク祭りじゃないかっていうくらいマークがフューチャーされている。
そういう意味ではベーシストの方は必見かもしれない。
演奏を聴き入っている映像はエヴァンスもジョーも収録されているのだが、とにかくエヴァンスの手元が映らないのは覚悟しておいてほしい。
最後にエヴァンスのインタビュー映像が残っている。
最初は、ジョーがドラムを片付けていたり、機材の撤収映像か?と思ったがその奥、ピアノに前にエヴァンスとインタヴュアーが面と向かって話している様子がばっちり収録されている。
インタビュアーは客の反応をどう思っているか?、今日の観客をどう思うか?、今のトリオについては?、マイルスと連絡は取っているのか?など普通の神経だったら訊き辛くって訊けないような問いを次々とエヴァンスにぶつけていく。
対するエヴァンスはとても真摯に、一つ一つの問いに言葉を慎重に選びながら答えていた。
その姿に、本当に本作品を購入して良かったと思った。
このインタビューは機材撤収の間だけの短い時間を使ってのものだったらしく、時間が来ると「もう飛行機の時間だから」とエヴァンスは挨拶してインタビューを終えた。
その直後、フォトグラファーが「もう1枚ピアノと一緒の写真を!」とエヴァンスにお願いするのだが「機会は今、いくらでもあっただろ?」と苦笑し去っていく。
作品として悪い部分も確かにあるが、エヴァンスのライヴ映像としては文句なしに最重要作品であることは私が保証します。
この最高のステージを是非、最高画質・最高音質で楽しんでください。